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真冬の岩泉体験ツアー報告1(冬の岩泉型インターンシップ)
真冬の岩泉体験ツアー(2023/01/13~15)
参加者 : 岩手大学 農学部3年 菅原千尋
私にとって、今回の真冬の岩泉体験ツアーは人生2度目の岩泉町でした。
今回はこれまでインターンシップにて経験した龍泉洞黒豚ファーム、工藤牧場に加え、昔ながらの製法での豆腐づくりや酪農家さんの対談など様々な経験ができました。
1日目には豆腐作りをしました。
この豆腐は有芸地区の大豆を使って昔ながらの製法で作られている手作りの豆腐で1丁300円で売られています。これは、スーパーなので売られている豆腐が100円強であるのに対して三倍近い価格です。しかし、大豆を作る手間や昔ながらの製法で丁寧に豆腐を作る手間を考えたら、採算はとてもとれないそうです。それでもやり方を変えず、求めている人に販売するために作り続けられています。
2日目に体験をさせてもらった龍泉洞黒豚ファームでは、ブリティッシュバークシャーと呼ばれる血統の豚を他の品種が絶対に混ざらないように厳格に管理しています。それだけでなく、足腰が強く健康な母豚を作るために手間をかけて放牧を行っています。飼料もこだわりを持って与えてとても美味しい豚肉を生産しています。しかし、昨今の飼料高の煽りを受けて、売上では飼料分を回収できない月もあるそうですが、飼養コストが上がっても、こだわりを持ち続け、品質の良い黒豚を生産し続けています。
また、2日目の夜には濃厚飼料を使わず、グラスフェッドでの飼養を行う山地酪農と濃厚飼料を与える慣行の酪農という、異なる飼育方法の酪農家お二方のお話を聞きました。それぞれの農家にとって自分が正しいと思うやり方を選択し、プライドを持って生産しているということがよくわかりました。
そしてそれを学んだ上で、慣行の方法での酪農である工藤牧場のお仕事を3日目に体験させていただきました。
「酪農家=牛乳を搾っている」と言うイメージが先行していると思いますが、実際のお仕事内容は搾乳よりも乳牛や仔牛の管理に割かれる時間が大半です。今回の体験では仔牛のお部屋の掃除等行いましたが、お部屋ひとつ綺麗にするだけでもこんなに大変なんだと改めて痛感しました。それを365日休みなく何十頭も健康な状態を維持できるよう管理し、美味しい牛乳を生産し続けている酪農家さんには頭が上がらないと思いました。
これらの経験を通して深く考えたことは、「自分が食べるものの選択」についてです。自分が普段当たり前に購入し料理し食べている素材たち、あるいはコンビニ弁当のようにすでに調理されているものが、どんな工程を経て生産され、どうしてこの価格なのか。価格の根拠が分からなくなってしまった大きな原因は、生産現場と消費者が離れてしまったことにあります。消費者と生産現場が離れてしまった理由は、農場の臭いや騒音の問題などがあり、安易に否定できることではありません。しかし、生産現場が見えなくなってしまったことで消費者は個人の価値観で物を買う難易度が上がってしまい、結果として自分の体、そして心をつくるものである食べ物をよく知りもしないまま、購入し食べている現状があります。
そんな状態の現在だからこそ消費者は自分の食べている食品や料理のその向こう側について、能動的に知ろうとし、そして様々な情報を精査して、自分にとって「いいもの」を見つけて選択してくことが重要だと思います。
だから今後とも幅広く末永く「いいもの」の生産がずっと続いていくように、「いいもの」が今後も多くの人を感動させていけるように、私自身も今後とも自分が思う「いいもの」をなるべく選択し、正当な価格を払っていきたいと感じました。
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