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畜産インターン@岩泉2025(岩泉町地域おこし協力隊インターン)報告レポート3

2025.10.21

9月に実施した畜産インターン@岩泉2025のレポート3人目です。

一人目のレポートはこちら
二人目のレポートはこちら

 今回参加した学生に話しを聞くと、畜産よりもう少し広い、動物全般に関心のある学生が多かったです。特に「動物福祉(アニマルウェルフェア)」への関心が高く、これは今年に限ったことではなく、ここ数年、学生と話していると感じる事です。私も農学部の出身ですが、私が学生だった30年前にはほとんど聞いたことが無く、大きな時代の変化を感じます。いつの時代も、学生たちは時代の先端に触れ、それを現場に持ち込み、時代は変わっていくのだと思います。

 学生たちは机上や本からは見えてこない現場を学び、地域は学生が持ち込む新しい時代を感じる。そんなインターンを作りたいと思っています。

真ん中が荻原未弓さん

岩手大学 農学部 動物科学科2年
荻原未弓

1. 参加のきっかけ
 私は動物福祉に興味を持っており、将来は動物園の動物の常同行動を改善するための研究をしたいと考えています。今回のインターンでは展示動物は扱いませんが、動物福祉について研究するならばより広い視野を持つことが必要になると考え参加しました。

 

2. 作業内容
〇龍泉洞黒豚ファーム(9/11~13)
 【基本作業】
 ・豚舎の掃除
 ・給餌
 ・土木作業
 9/11:子豚を分娩舎から育成舎へ移動、母豚を放牧場へ移動
 9/12:子豚のワクチン接種(豚熱など)の補助、換気扇の掃除、豚が好む草を採取
 9/13:給餌器の掃除、子豚のワクチンと鉄剤の接種の補助、子豚の去勢の補助

 

〇短角和牛・黒毛和牛農家(9/15、17、20)
 9/15(佐藤あきえさん宅):短角の放牧地の見学、牧草地の見学、黒毛の牛舎の見学
 9/17(阿部牧場→佐藤文喜さん宅):給餌、牛舎の掃除、削蹄の見学、生まれたての子牛に授乳
 9/20(阿部牧場):給餌、ロールのビニールをたたむ、牛舎の掃除

 

〇放牧衛生@兜森放牧地(9/16)
 バイチコール、アイボメック(駆虫剤)塗布、子牛のワクチン接種見学

 

〇工藤牧場(9/18、19、22)
 【基本作業】
 ・給餌
 ・牛舎の掃除
 9/18:水受けの掃除、窓掃除
 9/19:窓掃除、搾乳
 9/22:ハウス牛舎の敷材交換、牛舎の壁に石灰塗布、獣医師による繁殖検診の見学および実習

阿部牧場

3. 感想
 今回のインターンでの一番大きな収穫は、「産業動物と愛玩動物の違いは何だろう」という疑問を持つことができた点でした。この疑問は、最初に訪れた龍泉洞黒豚ファームで生まれました。龍泉洞黒豚ファームの高橋さんは多くの犬を飼っておられ、愛玩動物と産業動物を見比べながら作業をすることができました。


 その中で、犬と豚の間には何か大きな違いがあるように感じました。しかし、食用として育てられている動物と、家族として愛される動物との違いを、明確に示すことはできませんでした。生育環境や手間のかけ方には大きな差がありますが、それ以上に「精神的なつながり」において大きな違いがあるように思いました。


 主観的な感覚ではありますが、このような感覚の違いも含めて「産業動物と愛玩動物の違い」について、今後さらに研究していきたいと考えています。

 

 私は産業動物の動物福祉について主に学びたいと思い、このインターンに参加しましたが、農家の方々が抱える問題について知ることができたことも大きな学びとなりました。農家の数が急激に減っていることは知っていましたが、新たに農業を始めるのは非常に困難であり、現状では減少の一途をたどっているということが印象に残りました。このお話は阿部牧場で伺いましたが、このままでは和牛農家の存続が危うく、絶滅に近づいているのではないかと考えさせられました。また、岩泉町には獣医師がおらず深刻な人手不足の問題があることも分かりました。


 さらに、動物福祉の観点からも課題が多いと感じました。その問題の多くは金銭的な制約や土地不足に起因しており、人々の意識改革だけで解決できるようなものではないことを実感しました。例えば、動物にとってストレスの少ない環境を整えるためには放牧が有効とされていますが、生産コストが上昇するうえ、十分に広い土地を確保できなければ事故の危険性が高まるため、現実は容易ではありません。


 これらの問題を解決するために私たちにできることは決して多くないかもしれません。しかし、国産の生鮮食品を選んで購入することで、農家の方々の生活を微力ながら支えることができると知りました。直接農業に関わらなくても、一人ひとりにできることがあるということを、この文章を読んでいる皆様にも知っていただきたいです。

 

4. 謝辞
 今回、このような貴重なインターンシップに参加させていただく機会を与えてくださった、岩泉町、KEEN ALLIANCEの皆様に、心より御礼申し上げます。


 また、現場での活動やお話を通じて多くのことを学ばせてくださった龍泉洞黒豚ファームの高橋様、阿部牧場の皆様、佐藤あきえさまをはじめとした大川肉牛生産組合の皆様、佐藤牧場の皆様、工藤牧場の皆様には、温かくご指導いただき誠にありがとうございました。今回得られた経験や学びを今後の学習や研究に生かし、動物福祉についてさらに深く考えていきたいと思います。

兜森放牧地

一般社団法人KEEN ALLIANCE
岩泉町移住コーディネーター 穴田光宏