岩泉町地域おこし協力隊

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岩泉町地域おこし協力隊インターン(畜産インターン@岩泉2024)報告3

2024.10.11

9月に実施した畜産インターン@岩泉2024の報告レポート3人目です。

1人目高橋一華さんの報告レポートはこちらから
https://0194.net/chiikiokoshi/1477/

2人目大場彩花さんの報告レポートはこちらから
https://0194.net/chiikiokoshi/1490/

 今回参加してくれた学生は、岩手大学の動物科学科と獣医学科の学生なので、いずれも大学で畜産について学ぶわけですが、実は岩手大学内には農場も含め、豚が1頭もいません。(牛と鶏はいるとのこと)そのため授業で養豚について学んでも、実際に豚に触れる機会は無いそうです。そんなこともあり、学生たちは養豚農家で直接豚に触れられる機会をかなり楽しみにしていました。学生たちが岩泉町をフィールドに興味のある事を学び、それが将来の役に立つのであれば、とても嬉しいことです。

菅野さん
左側が菅野李香さん

岩手大学 農学部 動物科学科2年
菅野李香

1.参加した理由
 私の将来の目標は、第一次産業を豊かにすることです。幼い頃、ただ可愛いという理由で好きになった牛や豚を、段々と専門的に学びたいと思うようになり、岩手大学農学部に入りました。畜産の課題や現状を知るために、自身で得られる情報は積極的に手に入れて学んできたつもりでしたが、圧倒的に実体験が足りないなと感じていました。

 そんな中、今回の岩泉インターンのプログラムを耳にし、来るしかないと思いました。乳牛だけでなく、黒毛和牛、短角牛、さらには岩手大学では接することのない養豚とも関わる機会があり、実は他にもインターンを探していたのですが、圧倒的な条件の良さに惹かれ、応募しました。

2.プログラム内容

  龍泉洞黒豚ファーム 工藤牧場(酪農) 佐藤牧場(短角牛農家) 和牛市場(雫石)

1日目

・豚舎の掃除
・豚の豚舎移動
・子豚のワクチン接種
・掃除、餌やり
・石灰消毒
・直腸検査
・市場見学
・生産者のお話
・肥育牛舎見学
・牛舎の掃除
・餌やり
2日目 ・豚舎の掃除
・離乳豚を育成舎へ
・母豚を分娩舎へ
・掃除、餌やり
・子牛の床材交換
・共進会に出す牛の洗浄、毛刈り
   
3日目 ・豚舎の掃除
・育成舎から肉豚舎へ
・子豚のワクチン接種
・掃除、餌やり
・藁の選別、掃除
・搾乳
   

その他:ガイダンス、報告レポート作成

3.全体の感想
 今回インターンに参加して、本やインターネットでは得られない、実際に体験したうえでの気づきが多くあったなと感じました。子豚の温かさやホルスタイン牛の人懐っこさ、黒毛和牛のおとなしさ、短角牛の仲間意識の強さは、農場に来て、一頭一頭と接さなければ、分からなかったと思います。これを知らずに自分は畜産に関わりたいなどと言っていたのか、と自分の経験の薄さを再認識しました。また、掃除や餌やりに限らず、豚では移動の手伝いやワクチン接種、牛では直腸検査や搾乳なども自分の手でやる中で、農場見学だけではできない経験をさせていただきました。

 そして何よりも、大学で学ぶ専門的な見解は論理的で正確ですが、そこと並行して現状を知り、“今の畜産”と向き合うのがいかに重要で必要なのかということが、今回のインターンで得た最大の学びだと感じています。

 私の夢は第一次産業を豊かにすることです。インターンを終えて、夢を叶える取り組みの中で、私が大切にしたいことが明確になりました。全体的な傾向をみて仕組みを変え
たり、一方的な支援制度や理想論を押し付けることになってしまわないよう、農家さんの声を聴いて、現実と向き合いながらともに課題を解決に導けるような存在になりたいと強く感じました。

 今回私が携わらせていただいたのはほんのごく一部ですが、得られた学びは本当に大きく、私の将来像の一部になることは間違いありません。長いようで短い2週間のインターンでしたが、本当に楽しくて面白く、参加してよかったと、心から思っています。

4.生産者の話を聞いて感じたこと~飼料問題について~
 様々な産業動物を繁殖・肥育している農家さんを訪れ、それぞれに特色のある生産過程を学ばせていただいたのですが、どの農家さんも、餌代の高騰が大きな課題の1つだとおっしゃっていました。産業動物の餌代の高騰は、多くのマスコミでも取り上げられている課題ですが、その現状がいかに厳しいかを教えていただきました。

 餌代の高騰は、現在の生産者を苦しめるだけでなく、新規就農者の減少にもつながります。そのため、一刻も早く解決すべき問題だと私は考えます。

 餌代が高騰した大きな原因としては、トウモロコシや大麦などの濃厚飼料の多くを輸入に依存しているため、物価や為替に左右されやすいというのが挙げられます。そのため対策としては、地産地消を中心とした飼料作りが推奨されています。具体的には、濃厚飼料自体を日本で大量生産する方法と、地球温暖化の原因でもある食料残渣を動物の飼料に変換させる方法があると思います。しかし前者は、日本の国土面積や地形、気候を考えると、実現が難しいと多くの本に記載されています。そして今回、後者の実現が厳しいことを知りました。畜産農家は特に人口の少ない地域に多く存在するため、飼料になるほどの十分な食物残渣が手に入りにくいこと、近年人々がジャンクフードなどの飼料化しにくいものを多く食べていること、食物残渣を飼料にする手間・費用が大きくかかることなどの理由から、地方での地産地消はとてもハードルが高いようです。

 これについて私は、今持つ知識の中でどうすればこの課題を解決に導けるかを考えました。まず、第一次産業者間のみでの解決は不可能に近いと感じました。そこで、第一次産業の周りに、現在需要が高まり経営的に潤っている IT・機械会社を置く方向で考えました。SDGsをテーマにクラウドファンディングで支援金を募り、食料残渣を動物飼料に変換する機械の製造を企業に提案し、農家に機械を提供後、利益が 20%以上増加した場合は企業に増加した分の売り上げの数%のキャッシュバックが入るというプロジェクトの思考はどうだろうかと考えました。しかしこれらは一定の支援金が集まることや協力してくれる企業や農家さんがあることを前提とした案なので、厳しい面も多々あるなと感じました。農家さんの話を聞いて、どの農家さんも飼料価格高騰という課題の解決を心から願っていました。私はまだまだ経験も知識も少ないですが、話をただ聞くのではなく、今の自分の状態で考えられる解決方法を常に模索していきたいと考えています。今後も畜産について学んでいく中で、課題と向き合い挑戦していける人材になりたいと改めて感じました。

5.謝辞
 温かく受け入れてくださった工藤牧場、佐藤牧場、龍泉洞黒豚ファームの皆様、この度は本当にお世話になりました。学生である私たちに、実際に作業を任せていただけたこと、心から感謝申し上げます。私たちが質問すると、一度手を止めて、丁寧に教えてくださり、私たちが腑に落ちるまで説明してくださり、ありがとうございました。また、和牛市場でお会いした農家の皆様など、多くの方から現場のリアルな話を聞くことができました。とても勉強になりました。

 最後に、岩泉町そしてkeen allianceの皆様、この度はこのような貴重な機会をいただき本当にありがとうございました。インターン中は、プログラムの話に限らず、岩泉町のことや岩手県全体の畜産についても詳しく教えていただき、新しい発見が多くありました。送迎やミーティングなども含め、大変お世話になりました。今回のインターンは、毎日学びがあり、本当に楽しい、充実した2週間でした。改めて、心から感謝申し上げます。

工藤牧場

一般社団法人 KEEN ALLIANCE
岩泉町移住コーディネーター穴田光宏